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「カルマの坂」

2008年08月08日 20:33

「ポルノグラフィティの歌詞について考えてみる」という目的で始めたこのブログ。曲はランダムに選ぶ予定。

今回は、いつもとは少し違う視点で。

プロフィールにもある通り、私は趣味で小説を書いている。そこで、たまには「小説」という枠で歌詞について考えてみようと思う。

選んだのは、重々しい物語を辿る「カルマの坂」

今回このブログを書くにあたり、改めて歌詞カードを見て驚いた。(下に示してあるサイトからでも良いので、できれば皆さんにも歌詞を確認して頂きたい。)
この曲の歌詞には、句読点があり、ト書きがあり、セリフがあり、ダッシュで囲まれた部分もある。歌詞というよりは、まるで小説のような形式で書かれている。

内容も注目すべき点である。
ほんのわずかな短い文、タイトルを入れてもたった30行の中に、世界観の説明があり、起承転結があり、それぞれ役割を持った登場人物(主人公、ヒロイン、悪役)が存在している。
しかも、深いテーマをはらんだ存在感のあるストーリー。まるで一冊の小説を読んだ後のような手応えが残る。

世界観は、今の時代ではなく、日本ではないどこか。日々の生活に何不自由なく暮らしている私たちが暮らしている「この場所」ではない、どこか。
貧富の差が酷く、貧しい者は盗みをしないと生きていくことすらできない。そんな世界。

起承転結の「起」は、世界観と主人公である少年の説明。(9行目にある「」まで。)
「承」は、ヒロインである少女と、少年との出逢い。悪役である金持ちの存在も語られている。(18行目にある二個目の「」まで。)
※ここから曲調が変化し、物語は「転」へ。さらに間奏でクライマックス感を演出。
「転」は、少年が金持ちの屋敷に侵入し、少女を殺すところまで。(26行目の「少女に。」まで。)
そして、「結」で物語の締め。少女を助けることのできなかった虚無感を空腹感で表現している。

だいたいこんな感じになると思う。こうして起承転結に分けることができるのは、物語をきちんと組んであるからだ。
ところでひとつ気になることがある。最後から2行目の「確かに感じてる」の後にだけ句点(。)が無いのだ。そして、唐突にダッシュ(-)で囲まれた文があり、物語は終わりだと告げられる。
なぜ最後だけ句点(。)だけ無いのか、私なりに考えてみた。おそらく、物語はここで終わるが、少年の人生はこの先もまだ続いていくということを示唆しているのではないだろうか。それすらも意識してやっているというのなら、本当に恐れ入る。

タイトルにある「カルマ」とは、宗教用語で、良い行いや悪い行いのこと。前世のカルマは現世に影響し、現世のカルマは来世に影響するという……まあ、良いことをたくさんすれば来世はそれなりに良く、悪いことをたくさんすれば来世はそれなりに悪くなるということ。現世が悪いのは前世で自分が悪いことをたくさんしたから、とか、そういう考え方もする。
私は「カルマ」という言葉について、そう理解している。(←ツッコミがある方はください! 私はあまり詳しくないので!)

歌詞の主人公である少年は、盗みをはたらいて生活している。でもそれは生きるために仕方のないこと。
少年は金持ちの屋敷に乗り込み、たくさんの人間を殺す。でもそれは少女を助けるためのこと。
そういう理由があっても、悪い行いをしたというカルマは増えていく。
本当に人は平等なのか? 世の中には明らかに神に愛されている者とそうでない者がいる。(まあ、少年や少女は神様から「ギフト」をもらえなかったのだろう…。)
こんな世の中は、本当に正しいのか。そういったテーマが込められた曲だと思う。
少年が登る「カルマの坂」は、これから彼が多くの人間を殺し、多くの罪を犯そうとしていることを表現している。

たった30行の歌詞の中に、これだけのものを全て表現している新藤晴一氏には敬意と同時に畏怖すら感じる。
文章というものは、長く書くよりも短くまとめる方が技術を要すると聞いたことがある。必要な情報をわかりやすく簡潔にまとめるには、それなりの技術が必要なのだ。

小説を書く身としては、歌詞のひとつひとつの文章にも驚かされる。言葉の省略がとても多い。例えば、少年が金持ちの家を見とどける場面があるが、「金持ち」という言葉が出てくるのはこの一回きりだ。
なのに、この金持ちが何をしたのか、この物語の中でどういう役割なのか、最後はどうなったのか、すべて「推察」することができる。

この「推察」というのが非常に重要である。
新藤氏は非常に計算し尽くして(あるいはそのたぐいまれなるセンスで)語句を配置し、ある程度の言葉が欠けていても、読み手自身がそれを推察して補えるように歌詞を組んであるのだ。実はこれは読み手側の能力も要求される。ある程度の読解力がないと、「推察」を行うことは不可能だ。

決して親切ではないが、それゆえに彼の書く歌詞は魅力的だ。そして、それをわかりやすく噛み砕くのがこのブログの方針。


…ところで、今回の内容は、たぶん小説を書いている人じゃないとよくわからないんじゃないかなぁ…。ちょっと不安。
とりあえず文章内で使用した語句の説明を幾つか下に書いておきました。もしよかったら参考にして頂けると幸いです。


データ:「カルマの坂」
     作詞 : 新藤晴一 作曲 : ak.homma



・句読点……丸(。)と点(、)のこと。
・ト書き……セリフ以外の部分のこと。
・ダッシュ……線(-)のこと。Wikipediaには『言葉の「間」を表わすほか、説明を加えるときの丸括弧のようにも用いられる。』とある。

※小説に関する用語については以下のサイトを参照。
「約物 - Wikipedia」
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%84%E7%89%A9)

「起承転結 - Wikipedia」
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%B7%E6%89%BF%E8%BB%A2%E7%B5%90)

※歌詞については以下のサイトを参照。
「Yahoo!ミュージック - ポルノグラフィティ - 歌詞」
(http://music.yahoo.co.jp/shop/p/52/157948/1/3/1/0/0/)

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コメント

  1. ロンド | URL | -

    確かに小説ですよね
    このゆっくりめの曲では
    聴いているだけでは、内容は分かりづらいので
    歌詞を見ようとした人にだけわかる句点と句読点

    少女を殺したことによって少年は何を得たんでしょうね?

  2. シマナミ | URL | -

    >ロンド様

    言われてみれば、まるで語るような曲調かも。昭仁さんはかなり熱唱してますが…。

    ポルノの歌詞は本当に、よくよく観察してみると「あっ」と思うことがあります。このブログを始めてから何度も収穫がありました。

    少年は…死よりもつらい現実から少女を解放させたかったんじゃないかなあ…と思います。貧困という境遇にいる者同士だからこそ、少女の痛みを感じ取ったのかも。

  3. shsh | URL | W19U3qKA

    文以外にも意味が込められているとしたら・・凄いです。。
    そして、それを受け取れて、他者に伝えられるシマナミさんも。。
    分かりやすく伝えることが出来て・・本当に尊敬します!

    歌詞を改めてじっくり読んでみました。
    確かに「金持ち」と言う言葉は一度だけでした。
    それでもしっかりと伝えられていて・・ 
    自分はブログをやって初めて少ない言葉で分かりやすく伝えることの大変さを知りました。
    演奏や詞・曲作りなど、経験してみないと本当の大変さや凄さは中々感じ取れないものですね


  4. シマナミ | URL | -

    >shsh様

    コメント返しが遅れてしまい、申し訳ありません。

    「物語はここで終わるが、少年の人生はこの先もまだ続いていくということを示唆しているのではないだろうか。」という考えは、かなり好意的に見た場合です。
    もしかしたら単に晴一さんが「。」を書き忘れただけかも知れません(笑)

    でも、この「カルマの坂」は非常にギリギリの線で言葉を削ってる感じがします。必要最低限か、もしかしたら少しマイナスくらい。受取手側の想像力があって初めてプラスになり意味をなす歌詞だと思います。

    晴一さんの歌詞は、本当に神懸かっているなあと思います。

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